
結論:保険は、不安を感じるたびに増やすものではなく、「何が起きたら、いくら不足するのか」から考えるものだと思います。必要保障額を見れば、足りない保障と重なっている保障を分けやすくなります。
保険の見直しは、感情が入りやすいテーマです。病気になったらどうしよう。自分に何かあったら家族は大丈夫だろうか。仕事が止まったら生活費を払えるだろうか。そう考えると、保障を増やしたくなるのは自然なことだと思います。
ただ、不安を出発点にすると、保険はどんどん増えやすくなります。死亡、医療、がん、就業不能、介護、事業リスク、教育費、老後資金。心配ごとを一つずつ商品で埋めようとすると、家計の負担が大きくなり、かえって生活の余白が小さくなることもあります。
だから私は、保険を考える時は「不安かどうか」より先に、必要保障額を見る方がよいと思っています。必要保障額とは、何かが起きた時に必要になるお金から、すでに用意できるお金や公的保障を差し引いた不足分です。つまり、保険で本当に埋めたい穴を見つける考え方です。
保険は安心を買うものですが、安心の正体は「不足額が見えていること」でもあると思います。
まず「何に備える保険か」を分ける
保険を見直す時に最初にしたいのは、契約中の商品名を見ることではなく、何に備えているのかを分けることです。死亡時の生活費、子どもの教育費、病気やけがの治療費、働けない期間の生活費、事業の固定費、借入返済など、守りたい対象を先に分けます。
ここを分けないまま保険証券だけを見ても、判断しにくいです。保障額が大きいから安心とも限りませんし、保険料が安いから良いとも限りません。自分の暮らしや働き方に対して、どのリスクをどれくらい移しているのかを見る必要があります。
特に個人事業主や小さな会社の経営者は、家計と事業が近くなりやすいです。自分が働けない時の生活費だけでなく、家賃、外注費、システム利用料、借入返済など、事業側の支払いも止まりません。会社員とは必要な備えが違うこともあります。
公的保障と貯蓄を先に確認する
保険を考える前に、公的保障と手元資金を確認したいです。会社員なら健康保険の傷病手当金、遺族年金、雇用保険などがあります。個人事業主は会社員より薄い部分もあるため、そこをどう補うかが論点になります。
また、生活防衛資金や貯蓄がある場合、その分は保険で全部埋めなくてもよいかもしれません。反対に、手元資金がほとんどないなら、短期の入院や働けない期間にも備えが必要になることがあります。
保険は、すべてのリスクを消すものではありません。自分で持てるリスクと、保険会社に移したいリスクを分ける道具です。小さな支出まで保険でまかなうより、起きたら家計や事業に大きな打撃が出るものに絞る方が、考え方としては自然だと思います。
死亡保障は「残された人の不足額」で見る
死亡保障を考える時は、「いくらあれば安心か」ではなく、残された家族にいくら不足するかを見ます。生活費、住居費、教育費、葬儀費用、借入、配偶者の収入、遺族年金、貯蓄などを並べると、必要な保障額が見えやすくなります。
たとえば子どもが小さい時期は教育費や生活費の不足が大きくなりやすいですが、子どもが独立した後は必要額が下がることもあります。住宅ローンに団体信用生命保険が付いている場合、住居費の見方も変わります。
つまり、死亡保障は一度入ったらずっと同じ金額でよいとは限りません。家族構成、住宅、子どもの年齢、配偶者の働き方によって、必要額は変わります。定期的に下げられる保障がないかを見ることも、保険見直しでは大切です。
医療保険は「治療費」だけでなく収入減も見る
医療保険を考える時、入院日額や手術給付金だけに目が行きやすいです。ただ、実際に家計に影響するのは、治療費だけではありません。働けない期間の収入減、家族のサポート費用、交通費、食事、仕事の代替手配などもあります。
会社員で有給休暇や傷病手当金がある人と、個人事業主で休むと売上が止まりやすい人では、備え方が違います。医療費そのものは高額療養費制度で一定程度抑えられる場合がありますが、収入減や事業の固定費は別に考える必要があります。
医療保険を厚くするか、生活防衛資金を厚くするか、就業不能保険を検討するか。どれが正しいというより、自分がどの不安に備えたいのかを分けて考えることが大切だと思います。
保険料は固定費として見る
保険料は毎月出ていく固定費です。ひとつひとつは大きくなくても、複数の保険に入ると家計や事業資金を圧迫します。安心のために入った保険が、毎月の資金繰りを苦しくしているなら、見直す価値があります。
保険料を下げることは、必要な備えを削ることとは限りません。重複している保障を外す、保障期間を見直す、貯蓄で対応できる小さなリスクを外す、更新型の保険料上昇を確認するなど、できることはあります。
ここで大切なのは、安さだけで決めないことです。保険料を下げた結果、起きたら困る大きなリスクまで外してしまうと本末転倒です。必要保障額を見ながら、残すものと減らすものを分けたいところです。
事業者は「自分が止まるリスク」も見る
個人事業主や小さな会社の場合、自分が動けなくなることが、そのまま売上停止につながることがあります。会社員なら休職中に一定の制度を使える場合がありますが、事業者は取引先対応、納品、請求、外注管理まで止まりやすいです。
この時に見るのは、治療費だけではありません。自分が働けない間の生活費、事業の固定費、外注で代替できる作業、既存顧客への連絡、納期変更の可能性などです。保険で備える部分と、運用ルールで備える部分を分けると、現実的な対策になります。
たとえば、すべてを保険で解決しようとするのではなく、緊急時の連絡テンプレート、外注先リスト、引き継ぎメモ、生活防衛資金を合わせて持つ。こうした準備も、広い意味ではリスク対策だと思います。
見直すタイミング
保険は、暮らしや働き方が変わった時に見直すのが自然です。結婚、出産、住宅購入、転職、独立、法人化、借入、子どもの進学、親の介護、配偶者の働き方の変化などは、必要保障額が動きやすいタイミングです。
また、保険の更新時期も確認したいです。更新後に保険料が大きく上がる契約もあります。若い時に安く感じた保険が、年齢とともに負担になることもあるので、更新前に一度内容を見ておくと安心です。
保険証券を見る時の順番
保険証券を見る時は、商品名から入るより、保障の中身を順番に見た方が分かりやすいです。保障対象、保険期間、払込期間、保険料、更新の有無、解約返戻金、特約、給付条件。このあたりを一覧にすると、重なっている部分や古いままの部分に気づきやすくなります。
特約が多い契約は、何に入っているのか分かりにくくなりがちです。必要な特約もありますが、昔すすめられたまま残っているものもあります。分からない時は、保険会社や担当者に「どんな時に、いくら出るのか」を具体例で確認するとよいと思います。
今日から確認したいこと
1. 契約中の保険を、死亡・医療・就業不能・事業リスクに分ける
2. 公的保障、貯蓄、生活防衛資金で対応できる範囲を書く
3. 起きたら家計や事業に大きく響く不足額を出す
4. 重複している保障と、更新後の保険料を確認する
保険は、入っていること自体が目的ではありません。何かが起きた時に、家族や事業がすぐ崩れないようにするための道具です。不安を商品で埋める前に、何がどれくらい不足するのかを見る。その順番にするだけで、保険の見直しはかなり現実的になります。
個別の判断は家族構成や健康状態、働き方によって変わります。迷う場合は、保険を売る立場だけでなく、家計全体を見られる専門家にも相談しながら考えるのがよいと思います。
参考リソース
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