
結論:自分の経験を掘り起こすと、すでに持っている価値が見えてきます。職務経歴の羅列ではなく、誰かの役に立った場面を言葉にすることが、自分の売り物を見つける出発点です。
「自分には特別なスキルがない」と感じている人でも、過去の仕事や経験をひとつずつ見直していくと、気づいていなかった強みが出てくることがよくあります。資格や専門的な知識だけが価値なのではなく、誰かの困りごとを解決した場面や、他の人がやりたがらない仕事をこなしてきた実績も、立派な売り物です。
ただ、多くの人は「過去のことだから今さら」と思って、以前の経験を活かす発想を持ちにくくなっています。そして目の前の仕事をこなすだけで、自分が何を提供できるかを言葉にしないまま日々が過ぎていきます。その結果、実力があっても仕事が来ない、発信しても響かないという状況に陥りやすいのです。
経験の棚卸しと職務経歴書は違う
職務経歴書は、採用担当者に向けて書くものです。「どんな業務を担当したか」「何人チームで動いたか」「使ったツールは何か」といった情報が中心になります。一方で、ここで話している経験の棚卸しは、別の問いから始まります。
問いはシンプルです。「自分がいたことで、誰かが楽になった場面はどこか」です。これを考えると、担当業務の背景にある価値が見えてきます。たとえば「データ集計担当」ではなく、「毎月上司が時間を取られていた作業を仕組みに変えて、月8時間を空けた」という言い方になります。同じ経験でも、受け取り手への影響を言葉にするだけで、全く違う印象を与えます。
職務経歴を「何をしたか」ではなく「誰のどんな困りごとを減らせたか」に置き換える作業が、価値の言語化の第一歩です。
よく使う「得意なこと」より、「続けてきたこと」を先に見る
得意なことを見つけようとすると、多くの人は「これは人並みだから」「みんなできるはず」と思って、候補から外してしまいます。しかし実際には、自分が普通にやっていることが、他の人にとっては難しいというケースは少なくありません。
そこで試してほしいのが、「続けてきたこと」を先に見ることです。特に意識せずとも10年以上続けてきた習慣や仕事のやり方、誰に言われたわけでもないのに毎回やってきた工夫。これらは無意識の得意が染み込んだものです。
たとえば「打ち合わせ後は必ずその日中にメモを送ってきた」「依頼を受けたら必ず完了期日を先に確認してきた」といった行動パターンも、立派な強みです。クライアントや同僚から見れば、「この人に頼むと安心」という信頼の根拠になっています。
「ありがとう」と言われた場面を書き出す
価値を掘り起こすもう一つの方法として、「感謝された場面」を思い出すことがあります。大きな実績でなくて構いません。「助かった」「また頼みたい」「あなたに聞いてよかった」と言われた瞬間を思い出すと、そこに自分の価値が隠れています。
よくある例として、こんな場面があります。資料のデザインをちょっと直しただけなのに「見やすくなった」と喜ばれた。会議の後に要点を一言でまとめたら「分かりやすい」と言われた。複雑な手続きの手順を書いてあげたら「何度も見返した」と感謝された。これらはすべて、その人にしかできる形で価値を届けた瞬間です。
感謝された場面を10個書き出すだけで、自分がどんな状況で役に立ちやすいかのパターンが見えてきます。そのパターンこそが、売り物の候補です。
過去の仕事を「誰に何を届けてきたか」で分類する
自分がやってきた仕事を、相手の属性と提供した価値で分けてみることも効果的です。たとえば「若手メンバーに対して、作業の抜け漏れを防ぐ手順書を作ってきた」「経験の浅い担当者に向けて、クライアント対応の言葉の選び方を教えてきた」といった形で書くと、自分が誰に何を届けてきたかが明確になります。
この分類を続けると、「自分がよく関わってきた相手のタイプ」と「その人に提供してきた価値の種類」が見えてきます。それがそのまま、今後サービスを届ける相手と内容のヒントになります。
「昔の仕事と今は違う」と感じる人もいますが、培ってきた姿勢や判断の傾向は、環境が変わっても変わりにくいものです。過去から切り取れるものは思っているより多くあります。
言葉にした経験を「誰かの問題」と結びつける
掘り起こした経験は、そのままでは使えません。「自分にはこういう経験がある」という情報を、「だからあなたのこの問題を解決できる」という言葉に変える作業が必要です。
たとえば「10年間、中小企業の経理を担当してきた」という経験は、単体では価値が伝わりにくいです。これを「確定申告が初めてで何から手を付けるか分からない個人事業主の方に、書類の準備から提出まで一緒に動きます」と言い換えると、誰に向けた何かが一気に明確になります。
この変換が難しいと感じる人は、「自分の経験を、どんな人がどんな場面で必要としそうか」を先に考えると進めやすくなります。経験を持っている自分の視点ではなく、困っている誰かの視点で考え直すことが鍵です。
今日から試せること
まず、過去5年の仕事の中で「感謝された場面」を3つ書き出してみてください。日時や状況は大まかで構いません。「何が起きていたか」「自分が何をしたか」「相手の反応はどうだったか」の3点を書くだけで十分です。
次に、その3つを見比べて、共通するパターンを探してください。同じ種類の相手に価値を届けていたか、同じ種類の作業が評価されていたか。そのパターンが、自分の売り物の輪郭になります。
「まだ自信がない」と感じる場合も、書き出す作業だけは先にやってみてください。経験を言葉にしてみると、「意外と自分にも提供できることがある」と気づく人がほとんどです。自分を過小評価したまま発信の機会を逃すより、まず手を動かすことのほうが大切です。
「まだ実績がない」と思う人こそ、経験の言語化が重要
「独立してまだ日が浅い」「フリーランスを始めたばかりで実績がない」という人ほど、過去の経験をどう言葉にするかが重要になります。会社員時代の経験は、立派な実績です。ただ「元〇〇社勤務」という肩書きでは伝わらないことも多いため、具体的な場面を言葉にする作業が特に大切になります。
たとえば「10年間、食品メーカーの営業担当として顧客対応をしてきた」という経歴は、そのままでは価値が見えにくいです。でも「新製品の展示会での顧客説明を毎月担当し、商談化率を3割上げる資料構成を自分で考えてきた」と言い換えると、何ができるかが一気に具体的になります。
肩書きではなく場面で語ること。これが、実績が少ない段階でも信頼を作る言語化の基本です。
掘り起こした経験を言葉にしても、最初は「本当にこれが価値になるか」と自信が持てないことがよくあります。そのまま発信をためらってしまうより、まず身近な一人に見せて反応を確かめてみることが先です。自分では当たり前だと思っていることが、他の人にとっては「それ、どこで頼めるの」につながる場合があります。まずは言葉にしてみること。そこから始まります。
自分の経験をどう言葉にすればいいか、一緒に考えたい方はご相談ください。
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